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更年期障害

更年期のお悩みにきめ細かく対応しています

女性のライフスタイルに対する意識は近年になってさらに多様化してきています。従来の更年期障害治療は60歳までと考えられていましたが、現在ではそれ以降にも女性ホルモンの分泌低下を防ぐための治療を続けたいとお考えの方が増えてきています。また、閉経後には骨粗鬆症・高血圧・脂質異常症・動脈硬化といった疾患の発症や進行、粘膜の老化などのリスクが高くなりますので、その予防のために女性ホルモンの補充療法の持続を希望されるケースもあります。
当院では、患者様の状態やお考えにきめ細かく合わせた治療をご提案し、患者様がご自分らしくいられる快適な生活の実現をサポートしています。女性ホルモンの補充療法には内服薬に加え、貼るパッチタイプ、塗るジェルタイプの薬があり、漢方処方やサプリメントなども含め、患者様がご自分に合った治療法をお選び頂けるようにしています。更年期やそれ以降のお悩みに幅広く対応していますので、お気軽にご相談ください。

単に長生きするだけでなく
生活を楽しみ元気に暮らす為に

閉経は平均して50歳前後に生じますが、女性の平均寿命は87歳となっておりますので、閉経後の人生は30~40年あるということになります。閉経すると、それまで様々なリスクから守っていた女性ホルモンの分泌が大幅に低下し、骨・血管・粘膜などの老化が進行し、適切な予防や治療を行わなければ60~70歳代で骨粗鬆症による骨折、高血圧や脂質異常症などによる動脈硬化・血栓症、粘膜の老化による萎縮性腟炎など、多くの疾患の発症・進行リスクが高くなってしまいます。単に長生きするだけでなく、高齢になっても生活を楽しみ、元気に暮らすためには、状態に合わせた適切な薬の処方が有効です。

更年期障害

生理が来なくなる閉経の前5年間、後5年間の合計10年間が更年期です。更年期には卵巣機能が低下して分泌される女性ホルモンが低下し、ホルモンバランスが大きく乱れます。脳の視床下部や脳下垂体は女性ホルモンの分泌を促す指令を出しますが、分泌が不足することで混乱が生じ、更年期障害と呼ばれる多くのつらい症状を起こしやすくなります。更年期に現れる症状の内容や強さ、現れる期間には個人差が大きく、短期間に多少の不調を感じる程度から、10年以上に渡って日常生活に大きな支障を生じる症状に悩まされるケースまで様々です。こうした症状は適切な治療によって改善が可能であり、閉経による老化や疾患の発症リスクの緩和も期待できます。つらい症状がある、日常生活に影響するなど、更年期に関するお悩みがありましたら、できるだけ早めにご相談ください。

症状

心身への幅広い症状を起こし、内容や強さ、症状が現れる期間は患者様によって大きく異なり、同じ方でも時期によって症状が変化します。代表的な症状には、急激にほてりや大量の発汗を起こすホットフラッシュがあり、他にも頭痛や肩こり、冷え、腰痛、睡眠障害、気分の落ち込みなど様々な症状があります。症状は自律神経系(血管運動神経系)、精神神経系、その他(運動器や消化器など)に大きく分けられます。

自律神経系

呼吸、血液循環、体温調節、消化・吸収、内分泌などは、自律神経によって無意識にコントロールされています。心身の状態に合わせて交感神経と副交感神経が交替しながら適切に調整されていますが、このバランスが崩れると様々な機能の制御不全が起こって症状を起こします。急激なほてりや大量の発汗を起こすホットフラッシュは自律神経系の症状です。

精神神経系

感情のコントロールが困難になり、イライラ、怒りを抑えられなくなる易怒性、反動として起こる気分の落ち込み、不安、抑うつ状態などが起こります。更年期はお子様の自立や親の介護、仕事のリタイアなど生活にも大きな変化が起こる時期であり、その影響が症状に関与することが多いです。

その他

関節や筋肉の痛みやこりといった運動器症状、胃もたれ・食欲不振・下痢・便秘などの消化器症状などがあります。

セルフチェック

早めに受診して適切な治療を受けることで、日常生活に支障を生じるようなつらい症状を起こさずに過ごせる可能性が高くなります。単なる不調や疲れのように感じられる場合も、原因が更年期と分かれば治療によって改善できます。更年期にどれだけ適切なケアや治療を受けるかによって、その後の疾患リスクなども変わってきますので、「もしかしたら」と感じたらセルフチェックを行ってご自分の状態を確かめてみましょう。

簡略更年期指数(SMI)チェック表

更年期症状を客観的にとらえて数値化できることから、幅広く使われています。
症状の程度をご自分で直感的に判断し、点数をつけて合計を出します。
1つの項目に複数の症状がある場合、最も強いと感じる症状の点数を記入してください。

 
1)顔がほてる 10 6 3 0
2)汗をかきやすい 10 6 3 0
3)腰や手足が冷えやすい 14 9 5 0
4)息切れ、動悸がする 12 8 4 0
5)寝つきが悪い、または眠りが浅い 14 9 5 0
6)怒りやすく、すぐイライラする 12 8 4 0
7)くよくよしたり、憂うつになったりすることがある 7 5 3 0
8)頭痛、めまい、吐き気がよくある 7 5 3 0
9)疲れやすい 7 4 3 0
10)肩こり、腰痛、手足の痛みがある 7 5 3 0

簡略更年期指数の自己採点評価(10項目の合計点)

0~25点

特に問題なく更年期を過ごしています。これまでの生活習慣を続けるよう心がけましょう。

26~50点

食事や運動などの生活習慣を見直し、無理なく楽しめる範囲での改善を試してみましょう。

51~65点

今後、つらい症状を出さないためにも、婦人科の受診をお勧めします。

66~80点

婦人科を受診し、半年以上の治療を受けることで改善が可能です。快適に暮らすためにも早めに受診しましょう。

81~100点

できるだけ早く婦人科を受診してください。更年期障害以外の疾患の関与も疑われますので、他診療科による精密検査が必要と判断された場合には、連携している高度医療機関をご紹介しています。お気軽にご相談ください。

治療

基本的に更年期障害の治療は健康保険が適用され、その範囲で十分な症状の緩和が見込めます。
下記では保険診療が適用される更年期治療の内容をご紹介しています。

HRT(ホルモン補充療法)

低下している女性ホルモンを補充して症状改善に導きます。患者様に合わせて、エストロゲンのみの処方、エストロゲンとプロゲストーゲン併用処方が行われます。内服薬以外に、貼るパッチ、塗るジェルなどの薬があり、より負担なく続けられるものを選択できます。

漢方療法

漢方薬は幅広い症状や、変化する症状にも効果を期待できる処方がいくつもあり、更年期障害の治療でも昔から使われてきました。症状だけでなく患者様の体質などにも合わせた処方を行っており、他の薬と併用することも可能です。ほとんどは粉末のエキス剤ですので、一般的な西洋薬と同じような感覚で服用できます。

その他の薬やサプリメント

血液検査の結果や症状などに合わせた幅広い薬の処方も可能です。また、気分の落ち込みなど心の症状を緩和させる薬の処方が効果的なケースもあります。当院では、強い向精神薬はできるだけ使わない方針で処方しており、状態が安定した際には慎重に減薬・休薬に取り組んでいます。

更年期以降に発症・進行リスクが高くなる疾患

女性ホルモンは様々な疾患の発症リスクを抑える効果があり、更年期や閉経を迎えて分泌が減ると、そうした疾患の発症・進行リスクが上昇します。また、この時期に適切なケアや予防に取り組むことで老化の急激な進行を抑制し、健康な生活を長く維持できる可能性が高くなります。
更年期になったらご自分の身体を大切にケアし、効果的な疾患予防に取り組みましょう。

高血圧・脂質異常症

閉経して女性ホルモンの分泌が低下すると動脈硬化が急激に進行しやすくなり、高血圧になるケースがあります。また、女性ホルモンは内臓脂肪の分解を促す作用があり、閉経後にはそれが失われることで脂質異常症の発症リスクも上昇します。以前は健康診断で全く問題がなかった方でも、閉経後には総コレステロール・LDL(悪玉)コレステロール・中性脂肪の増加と、余分な脂質を回収するHDL(善玉)コレステロールの減少が起こりやすくなります。高血圧・脂質異常症、動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中の主なリスク要因であり、こうした深刻な疾患の発症を防ぐためには適切な治療が必要です。閉経を迎えたら毎年の健康診断で数値をしっかり確認してください。

骨粗鬆症

骨は形成と破壊・吸収という骨代謝を繰り返して強度を保っていますが、骨代謝のバランスを保つために働いている女性ホルモンの分泌が低下すると骨量が減少し、骨折しやすくなる骨粗鬆症の発症・進行リスクが高くなります。閉経後、女性は毎年2%ずつ骨量が低下すると指摘されており、適切な対策や治療を行わないと10年で20%の骨量減少が生じます。骨量が少なくなると、バランスを崩しただけで骨折しやすくなり、さらに骨量が減ると体重の重みで背骨が圧迫骨折を起こすこともあります。背骨の圧迫骨折が起こると背中が曲がる・背が縮むなどを起こし、無事な背骨に大きな負担がかかって連鎖的に骨折が起こって寝たきりになってしまう可能性があります。閉経を迎えたら早めに骨密度検査を受け、必要な予防にできるだけ早く取り組んで骨量を保つことが重要です。

粘膜の機能低下

粘膜の機能も低下し、ドライアイやドライマウスを起こしやすくなります。また、外陰部や腟も乾燥して萎縮性腟炎を起こすこともあります。

消化器の機能低下

消化器は自律神経によって機能がコントロールされていますので、更年期で自律神経のバランスが崩れると様々な機能不全を起こしやすい傾向があります。また、消化管は筋肉による蠕動運動によって内容物を先に送っていますので、こうした運動機能が加齢によって低下すると胃もたれ、食欲不振、膨満感、下痢・便秘といった症状を起こしやすくなります。

頻尿と尿漏れ

更年期は過活動膀胱でトイレが近くなったり、腹圧によって尿漏れを起こしたりといったことが起こりやすくなる時期です。女性は妊娠や出産などで臓器を支える骨盤底筋群が大きなダメージを受けやすく、そのダメージが残って加齢による筋肉の緩みが起こると臓器を支えられなくなり、頻尿や臓器が下がって外に出てくる骨盤臓器脱を起こすことがあります。骨盤底筋群は適切なトレーニングで強化できますので、出産経験が多く高リスクの方は早めにトレーニングを始めるようお勧めしています。

糖尿病・動脈硬化

女性ホルモンは血管のしなやかさを保つ働きを担っており、動脈硬化の発症や進行を予防するために役立っています。女性は男性に比べて中年期の生活習慣病発症が少ない傾向がありますが、これは女性ホルモンの働きによるものです。ただし、更年期を迎えると女性ホルモンの分泌が低下しますので、動脈硬化の発症や進行リスクが急激に上昇し、高血圧・脂質異常症・糖尿病といった生活習慣病のリスクが上昇し、動脈硬化が進行しやすくなります。それまで全く問題がなかったからと、健康診断を受けずにいると短期間に進行して突然、脳卒中や心筋梗塞を起こす可能性もあります。更年期を迎えたらしっかり健康診断を受けて、異常を指摘されたら早めに受診してください。